ファシアとごみ掃除、水素結合のはなし
前回につづきファシアのおはなしです。
ファシアは、コラーゲン線維と水分を多く含む結合組織。
筋膜と訳されることはあるけれど、それはただの「膜」ではありません。
網の目のような立体構造のあいだに、水をたたえた空間が広がっています。
ファシアは物質でありながら、水が流れる「場」でもあるのです。
水は、からだの清掃係
ファシアの立体ネットワークの中を、間質液と呼ばれる水分がゆっくりと流れています。
この水は、
- 細胞から出た余分な水分や老廃物を受け止め
- ファシアのすき間を満たしながら移動し
- 最終的に毛細リンパ管へと導かれます
筋肉の動きや呼吸、姿勢の変化は、この流れをそっと後押ししています。
ファシアがしなやかであれば、この「排水ルート」は保たれやすくなります。
なぜ、しなやかでいられるのか
その鍵を握るのが「水素結合」です。
水素結合とは、分子どうしがそっと手をつなぐような力。
強く固定するのではなく、必要に応じて離れ、またつなぎ直せる関係です。
水が水でいられるのも、この力のおかげです。
水分子は、おたがいにゆるやかに引き合いながら、一瞬ごとにくっついたり離れたりをくり返しています。
強すぎれば固まり、
弱すぎればばらばらになる。
その「ちょうどよいゆるさ」があるから、水は流れ、形を変え、動き続けられるのです。
ファシアの中で起きていること
ファシアをつくるコラーゲンやヒアルロン酸も、この“ゆるやかな手つなぎ”で支えられています。
コラーゲンのらせん構造は、水素結合によって保たれ、引っ張られると一部がほどけ、力が抜けるとまた結び直されます。
ヒアルロン酸は水分子と手をつなぎ、水を抱え込みながらゲル状の層をつくります。
だからファシアは、硬い膜でも、ただの液体でもなく、つながりながら、動ける組織なのです。
しなやかさとは
水素結合は、とても弱い力です。
でも弱いからこそ、切れても壊れず、すぐにつなぎ直せる。
しなやかさとは、壊れない強さではなく、つなぎ直せる強さなのかもしれませんね。
ファシアは、物質でありながら、流れを生む空間。
その中で、水と分子はゆるやかに手をつなぎ、からだの清掃と循環を静かに支えています。

